情は人のためならず

時計メーカーセイコーさんと熊本の１２０年続く
宝飾時計店のソフィ・タカヤナギさんとのトラブル。


熊本の震災で全壊して解体作業中に、
セイコーさんからソフィ・タカヤナギさんに取引終了通知が届いた件。

物議をかもしました。

理由は販売ノルマを達成していないから。


年末に新店舗が完成するので考慮して欲しいとお願いしてもダメ。
４０年に渡る取引実績があってもダメ。

通知には、在庫の返品は不可。
在庫販売はブランドイメージを損なわないようにとありました。

この件、和解が成立したようです。


セイコーさんからの通知をソフィ・タカヤナギさんが
ＳＮＳで公開していたものも現在削除されています。


それを前提として、読み進めていって下さいね。

そしてワタクシが問題にしたいのは、
主にこの件を傍観していた人たちのうちの一部の感覚。

この件でのソフィ・タカヤナギさん側の問題点と指摘されているのは

１．会社間のやり取りを無断で晒したことによる信用問題。

２．近隣に取引解除になっていないノルマ達成した宝飾店もある。

３．震災から年月も経過しているのに、考えが甘い。

４．商売は甘いものじゃない。契約は契約だ。

この中で、ごもっともと感じられるのは
ワタクシはせいぜい「１」です。

まぁマズいでしょうね。

でも、例えば親会社と下請けのような関係で
かつては一方的に理不尽な扱いを受けても泣き寝入りで
場合によっては代表が自分の生命を切り捨てる結果になったりした
そのあたりの事情を思うと、いざという時の抗議の方法としては
あってもよいのかもしれません。


信用と引き換えにはなりますが。

２．近隣に取引解除になっていないノルマ達成した宝飾店もある。

これは、近場で同じ震災に遭ったからと言って
被害も同じとは限らないので、何とも言えません。

３．震災から年月も経過しているのに、考えが甘い。

熊本震災より前の２０１１年の東北の震災の影響も
まだ残っているのに２０１６年の熊本震災の影響はもう無いと？

東北のプレハブ型仮設住宅入居者数は、
２０１８年で約２万人と言われていますわ。

４．商売は甘いものじゃない。契約は契約だ。

商売は非常時には甘いものです。

ワタクシ、時計メーカーさんと販売店さんのお取引に関しては
言及するつもりはありません。


問題にしたいのは、この「４」なんですのよ。


商売に関する耳年増になった学生さんの言葉かもしれないので、
取り上げて晒すのは大人氣無いことなのかもしれませんが。。

一般に「商売は甘いものじゃない」と言われます。
実際、基本的には甘いものではありません。
シビアなものです。


特に自分にシビアでなければ、成立しないことは多々ありますわ。

商売という言葉を法律に置き換えても
そう違和感無いのではないですか？


法律は甘いものじゃない。

当たり前です。
法律が簡単に甘々になる日常で、
どこに安全安心を求めて生活できますかしら？

でもね、そんなシビアな法律の世界でも、
非常時には甘さが発生することを許されていますわよ。

・情状酌量
・正当防衛
・緊急避難

法律も人と人との間に必要なものですが、
同じく商売も人と人との間に必要なもの。


人と人との間に必要なものは「情」です。

メジャーな大企業の創立者による創世記のお話を伺ったりしますと、
初期に騙されたり事故を起こしたりと大変な目に遭ったのを、
周囲の取引先さんの応援その他で乗り越えて、大成功なさった。


という話はひとつのパターンになっているほど
メジャー路線でしてよ。

考えてみて下さい。

人が介在する分野においてですわよ？


自分が大変な時に、足蹴にした人と助けてくれた人がいたとして、
その大変なところを乗り越えた後に、足蹴にした人に優しくできます？

更にその足蹴にした人が今度は困った事態になっていたとして、

「あの時は申し訳なかった。商売はシビアなものだからね。
　でも今度はうちが大変だ。助けてくれ。」

と言われて、心から同情して本音で優しく出来る方は聖人です。

ワタクシなら

「あの頃はありがとうございました。
　商売はシビアであるべきと教われましたから♪」

くらいは言いそうですもの。

公的な取り決めである法律でさえ、非常時の例外設定があるのです。


商売は私的な取引が基本ですから、
当事者同士が納得するやり取りをすれば良いわけで

「商売は甘いものじゃないから、ここはシビアな選択しますよ。」

は、ナンセンスと言いますか本末転倒と言いますか。。

情は人のためにかけるものではなく、
まわりまわって戻ってくるものなのだから
自分のためにかけるのです。


その循環を肌で認識できるようになる必要性を
声を大にして主張したいですわ。

そもそもが商売というものは、自分の利益の追求というよりは
誰かの役に立つことを考えて始めるもの。


なので緊急時には相手のことを慮るのが
自然な思考なのではないかと思いますのよ。

緊急時だろうと何だろうと、
「商売は甘いものじゃない」
を徹底できる感覚は、根本の商売のスタート地点から
「人の役に立つ」という理念が無いように感じるのです。

しつこく繰り返しますが、ワタクシはセイコーさんの一件に関しての
当事者に意見をつきつけているわけではありませんわよ。


販売店に文書を送ったのは、
セイコーさんの創業者でも代表者でもないですし、
二社間には、表に出ていない事情もあるかもしれません。

更にこの件は和解済みですから。

ワタクシが物を言いたい相手は、
この件に関するセイコーさんの対応を見て

「商売は甘いものじゃないんだから」

という理由付けだけで販売店さんを
切り捨てる意見を出してしまえる外野の方々です。

商売は甘いものじゃなく、契約は契約だというお考えで
商売は人ありてこそという理念が無いのなら。。

そしてワタクシが上で申し上げたことが
ピンと来ないのなら。。

高熱の時でも、重篤な病の時でも、身内の深刻な事態の時も、
決められた営業ノルマや作業ノルマをこなせずに
退職・左遷・その他ペナルティ待遇になった場合に


「ブラック企業！」と罵るのではなく、
「商売に厳しい当たり前な姿勢の経営陣だ！」と
褒めたたえる姿勢でいるべきだと思いましてよ。